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TECHNICAL ANNEX

1.概観
GiiB-JST mtSNPデーターベースはミトコンドリアゲノムに生じた一塩基多型間の機能的相違についての情報を提供します。このウェブサイトは、加齢に伴う多様な生理的ならびに病理的状態(長寿、パーキンソン病、およびアルツハイマー病)に関連するmtSNPsのみならず、生体のエネルギー代謝に関わる病態(肥満、るい痩、および2型糖尿病または動脈硬化)に関連するmtSNPsを同定するのに有用です。このmtSNPデータベースの主要な部分は、各々96名からなる7群(百寿者、パーキンソン病患者、アルツハイマー病患者、若年肥満男性、若年非肥満男性、一般の糖尿病患者、および顕著な血管病変を伴う糖尿病患者)のミトコンドリアゲノムの全塩基配列からなっています。このウェブサイトの目的は、mtSNPsの異なる組み合わせからなるハプログループ(mtHG, mitochondrial haplogroup)を保有している個体間の機能的違いを評価するための方法を提供することにあります。この目的のために5つのアプローチをとりました。
1) チトクロームcオキシダーゼ(複合体IV)およびユビキノール-チトクロームcオキシドレダクダーゼ(チトクロームbc1複合体あるいは複合体III)における非同義一塩基多型(nonsynonymous single nucleotide polymorphisms, nsSNPs)によって生じた構造変化を分子シミュレーション
2) 呼吸鎖酵素複合体(複合体I〜V)のミトコンドリアゲノムによって規定されたサブユニットがミトコンドリア内膜において折り畳み構造に関するnsSNPsの視覚化
3) 2種のリボソームRNA (12S rRNAおよび16S rRNA)および22種のトランスファーRNA分子の二次構造に及ぼすSNPsの視覚化
4) 機能の影響の評価のために哺乳類ミトコンドリアゲノムにコードされたタンパク質配列のnsSNPsにより生じたアミノ酸置換の比較
5) 特定のSNPsを保有している個体を調べるための、また、疾患とコントロール間でのSNPsの頻度を比較するための動的なシステム
2.データベースの項目
(1)mtSNP
一般的な多型の定義によれば、一塩基多型(SNPs)は一般集団において1%以上の頻度で検出される塩基置換(置換、欠失、挿入)です。mtSNPデータベースでは各々の群は96名から構成されているので、全ての塩基置換をSNPsと定義しています。異なる2群を比較する場合に、あるmtSNPsが一方の群では検出されずその群のみで検出されることがあります。この場合、これらのmtSNPsはその群の特異的なmtSNPsと見なすことができます。
(2)mtSAP
蛋白コード領域のmtSNPsは、同義置換synonymous SNPs (sSNPs)と非同義置換nonsynonymous SNPs (nsSNPs)に分類されます。このmtSNPデータベースにおいて、nsSNPsによって生じたアミノ酸置換にミトコンドリアアミノ酸多型mtSAPs (mitochondrial single amino acid polymorphisms)という用語を使用しました。
(3)Grantham値
mtSAPによって生じた機能的変化を評価するために、変化前のアミノ酸残基と変化したアミノ酸残基の間に生じた物理化学的相違を示すGrantham値(Grantham R. Amino acid difference formula to help explain protein evolution. Science 1974; 185: 862-864)を各々のmtSAPについて表示しました。190種類あるアミノ酸置換(20×19÷2)のGrantham値の平均は50です。 50以上のGrantham値は過激なアミノ酸置換、50未満のアミノ酸置換は保守的なアミノ酸置換であると考えられます。
(4)三次元構造に及ぼすmtSAPの影響の推定
さらに、アミノ酸置換のミトコンドリア呼吸鎖の機能に及ぼす影響を評価するために、mtSNPデータベースでは、各々のmtSAPまたは各々の個体で検出された一群のmtSAPsによって生じた構造変化を予測する分子シミュレーションをあらかじめ行いました。その計算結果を得られた構造を提供します。現在、ウシの酵素cytochrome c oxidaseおよびcytochrome bc1 complex (ubiquinol-cytochrome c oxidoreductase)の三次元構造が明らかになっています。ウシ酵素のミトコンドリアおよび核にコードされた全てのサブユニットをヒト酵素のアミノ酸配列によって置き換えました。ヒトの酵素の構造をダイナミック分子シュミレーションシステムにより計算しました。mtSNPデータベースの3D構造セクションでは、各々のmtSAPまたは各々の個体で検出された一群のmtSAPsの構造変化をシミュレーションシステムにより予測しておきます。あらかじめ蓄積された計算結果をprotein database format(PDB)ファイル形式として電子メールによってクライアントへ返信します。クライアントは受け取ったPDBファイルの情報をChime等の3Dビュワーにより3D構造を見ることができます。
(5)ミトコンドリアDNAにコードされたサブユニットの二次構造におけるmtSAPの位置の表示
mtSNPデータベースの2D構造セクションでは、各クライアントの要求に応じて、mtSAPsの位置をサブユニットの二次構造上に表示します。ND1〜6、ND4L、CO1〜3およびCytbの2次構造は、SOSUIシステムよる疎水性膜貫通領域の予測に基づいています[東京農工大学生命工学科Classification and Secondary Structure Prediction of Membrane Proteins by Mitaku Group; sosui@proteome.bio.tuat.ac.jp; http://sosui.proteome.bio.tuat.ac.jp/sosuiframe0.html].
 アミノ酸残基の位置はSOSUIシステムで予測しました。NADH脱水素酵素(ND1〜6およびND4L)およびATP合成酵素(ATP6およびATP8)のサブユニットの三次元構造は明らかになっていないので、各サブユニットのアミノ基N末端側を左上に配置しました。cytochrome c oxidase (CO1、CO2およびCO3)およびcytochrome b蛋白についてはウシの三次元構造が明らかになっているので、サブユニットの配向および折り畳みを結晶構造に合わせました。上側は膜間腔側に対応し、下側はマトリックス側に対応しています。
(6)tRNAまたはrRNAの二次構造におけるmtSNPの位置
tRNAの二次構造
トランスファーRNAの構造はSstructViewプログラム(http://smi-web.stanford.edu/projects/helix/sstructview/home.html) を使用し通常のクローバー葉構造で表示します。塩基置換の場所を表示させるためには、まず 1個のtRNA 遺伝子を選択し、OKをクリックします。すると、指定したtRNA遺伝子領域に存在するmtSNPsのリストが表示されます。対応するチェックボックスにマークすることにより1個または複数個のmtSNPを選び、OKをクリックします。tRNA分子の2D構造が表示されますので、構造を拡大したい場合は"zoom in" ボタンをクリックし、構造を縮小したい場合は"zoom out" ボタンをクリックします。選択したmtSNPは青色で強調表示されます。構造の中の塩基を確認するには、カーソルを塩基上に移動させます。この操作によりとその塩基の番号(1〜59-75)が表示されます。

rRNAの二次構造
12SリボソームRNA分子の二次構造はDr. Jan WuytsとProf. Rupert De Wachter (Department of Biomedical Sciences, Antwerp University (UIA), Belgium)によって予測された12S rRNA モデル(http://rrna.uia.ac.be/ssu/index.html)および16S rRNAモデル(http://rrna.uia.ac.be/lsu/index.html) に従いSstructView (http://smi-web.stanford.edu/projects/helix/sstructview/home.html)プログラムを用いて表示ます。まず、 1個のrRNA 遺伝子を選び、OKをクリックします。すると、指定したrRNA遺伝子領域に存在するmtSNPsのリストが表示されます。対応するチェックボックスにマークすることにより1個または複数個のmtSNPを選び、OKをクリックします。rRNA分子の2D構造が表示されるので、構造を拡大表示したい場合は"zoom in" ボタンをクリックし、構造を縮小表示したい場合は"zoom out" ボタンをクリックします。選択したmtSNPは青色で強調表示されます。カーソルをある塩基上に移動させると、その塩基の番号が表示されます。この塩基番号はmtDNAの塩基番号ではなく、その遺伝子領域内の番号です。

(7)進化におけるmtSAP
あるアミノ酸残基が種間で保存されているか否かを検討するために、各々のmtSAPを61種の哺乳類のアミノ酸配列と比較することが可能です。61種の哺乳類におけるミトコンドリアゲノム全塩基配列はorganelle genome database (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PMGifs/Genomes/40674.html)に登録されているものです。
3.塩基配列データ
ヒトミトコンドリアゲノムの全塩基配列に関する主要なデータは岐阜県国際バイオ研究所(Gifu International Institute of Biotechnology, GiiB)において得られました。
4.mtSNPの集計表
  • 遺伝子座ごとの多型頻度 (Summary of mtSNP by gene loci)
  • 塩基置換の種類別の頻度(Summary of substitution: transition/transversion)
  • 塩基配列長多型の一覧表 (List of nucleotide length polymorphisms for each group)  
5.開発責任者
田中 雅嗣(岐阜県国際バイオ研究所)
6.データの公開履歴(Data Releases)